SRID懇談会 2010年7月27日

日時: 2010年7月27日(火)午後6時30分〜8時
場所: 国際文化会館研修室 404号
テーマ: 『開発と移住』
講師: SRID会員 滝沢三郎
会費: SRID会員 無料
    その他 500円

 

開発と移住


日時:2010年7月27日(火)午後6時30分〜8時30分
場所:国際文化会館研修室 404号
出席者(敬称略):高橋、萩原、高瀬、松本、福田、福永、藤村、太田、今津、神田、滝澤、 黒田、湊、山下 (計14名)
講師:滝澤三郎会員
講師略歴
東京都立大学大学院博士課程修了。カリフォルニア大学バークレイ校でMBAを取得。米国公認会計士(USCPA)でもある。現職は東洋英和女学院大学国際社会学部教授。東大大学院総合文化研究科特任教授。前職はUNHCR駐日代表。1981年以降国連に勤務し、UNIDO管理部長、UNHCR本部財務局長などを歴任。駐日代表時代は日本におけるインドシナ難民の定住調査や、難民の日本への第3国定住政策にかかわる。最近、大学院生による移民難民研究会を立ち上げた。


講演要旨
 女子大に就職して羨ましがられている。毎朝身なりに気をつけて、ピンクのシャツなどを着るようになった。時々ゼミ生と飲みに行くが、生徒の親と同世代なのでそれ以上の発展性はない。今日は「UNDP人間開発報告書2009」を紹介しつつ、「移民難民の受け入れ」の側面から日本のODA政策を考えたい(資料2)。
 「人間の自由」の大きな要素は国内、国外への移動の自由である。1990年以降、特に移動が増えている。基本的な原因は国内、世界の所得格差にある。移動者の人間開発は出身国、受入国の開発に結びつく。全世界の7人に1人、9億4000万人が移動している。うち国外への移動は3%。例えばタイとミャンマーの間の「機会の不平等」は顕著であり、これがミャンマーからタイへの大規模な移住の背景にある。
 移動は移住者の「人間開発」を促進する。まず移動する人々へのインパクトだが、HDI(Human Development Index:人間開発指数)の低い最貧国から高い先進国に移住すると、平均して所得が15倍、就学率が2倍に上昇し、子供の死亡率が16分の1に低下するなど、社会に大きなインパクトを与える。出身国へのインパクトでは、本国への送金は年間4000億ドルとODA総額の4倍に達しており、20カ国で最大の収入源になっている。送金で家を建てる、子供を教育するなど家計レベルのインパクト、移住者による起業や政治改革など国家(地域)レベルのインパクト、民主的な考え方の伝播といったSocial Remittanceのインパクトがある。
 次に受入国へのインパクト。未熟練労働者移民に対する受入国の懸念は誇張されている。移住者がもたらすメリットはデメリットを上回り、開発戦略の補完になる。人口が1%動くとGDPも1%増加し、イノベーションや投資を促進する。移住労働者は3Kなど補完的な仕事に従事するため、受入国の雇用を奪うことにはならない。影響はプラス・マイナスGDPの1%以内であると試算されている。移民が来ると治安が悪くなるとしばしばいわれるが、移民による犯罪率は米国では低い。移民への見方は雇用情勢に影響される。景気が悪いとネガティブに捉えられ、好況のときには好意的にみられやすい。報告書は人間開発の視点から、ネガティブな側面を是正しようと努めているためか、日本人の一般的な認識とはやや異なる。
 人間開発を促進する国際的な移動に対する障壁はいくつかある。@貧困の壁。最も貧しい国の貧しい人は移住できない。他方豊かな国からは移動しない。A受入国の壁。選択的な縛りをかけ、高度技術者や期限付き移民はOK,しかし未熟練労働者は受け入れない傾向が強い。B出身国の壁。人の移動に政策で制約をかける。20か国が女性の出国を認めない。国によっては国内移動にも警官が賄賂を求めるなど、実質的な制約がある。C費用の壁。移動のコストはベトナムから日本の場合年収の6.5倍といわれる。渡航のためにカネを借りるのも難しい。貧困層ほど移動の機会は狭められる。
 2008年のリーマンショック以後、オーストラリア、マレーシア、韓国など受入国の失業率が一時的に上昇し、移民受け入れが制限されたが、長期的には移民増加の趨勢が戻る見込み。他方、送り出し圧力は今後も強まる。2050年にアジアでは労働人口が6億人増えるが、日本では30%の減少。途上国の人口増加と先進国の人口減少で、長期的に見れば人の移動は続く。
 UNDPの6つの政策提言では、単純労働者も含めてもっと移住を促進するべきとしている(資料3, 4)。具体的施策例として、ニュージーランド、カナダでは季節労働者の受け入れを検討している。イギリスは労働力不足を見ながらビザの発行を決める。スェーデンでは移住者が一旦入国すれば、他の地域に移動できる制度がある。移民の自由化は2国間協力で進めており、地域協力、国際協力は進んでいない。難民と違い、長らく移民は国内問題と認識されていたため。移住労働者の権利保護には、単に受け入れた政府だけでなく、雇い主、労働組合、NPOも頑張るべきだ。
 日本の人口問題について日経新聞が「経済ゼミナール」で連載している(資料5, 6)。日本の将来はお先真っ暗に見える。長期的な人口の推移をみると2005年がピーク。2050年に9000万人。2100年に4000万人と推定。日本の歴史始まって以来の急速な人口減少が始まった。人口ピラミッドも激変しているが、これはもはやリバースできない。少子化の要素は出生率の低下と非婚率の増加。団塊世代の年間270万人の出生数が、現在120万人。2050年に50万人程度に減る。
 特殊合計出生率が1.37人で推移すると、高齢化も進み、2050年に65歳以上が35%になる。非婚率の上昇については、今20歳の女性の4人に1人は生涯結婚しない(できない)。2.5人に1人は子供がいない。2人に1人は孫がいない。子供手当、女性労働、高齢者雇用、ロボットの利用などのほか移民受け入れもオプションだが、移民だけで労働力を補うとすれば、毎年60万人が必要になる。移民もいずれ年をとって従属人口になるため、受け入れの長期的・社会的なコスト・ベネフィットの検討が必要。
 日本が移民に「開かれた社会」になるか個人的には悲観的だ。日本は今後人口でも経済でもどんどん小さくなり、数十年にわたるその過程は大きな痛みと困難を伴うだろう。2006年に「入管難民法」が改正され、日本への移民が増えて現在の移民数は220万人。30年前の80万人からは増えてはいるが、人口の1.8%であって国際的にはまだ低い(資料7)。内訳は、日系ブラジル人など血統に基づく移民が39%、家族移民が31%、労働移民が30%で、難民などの人道移民はゼロ%(欧州では12%)。研修生は実態は単純移民労働者だ。松本市のある農家は月6万円で既婚の中国人女性を雇っている。本国に子供がいるとよく働く。半年働いて36万円、すべて子供の教育費に回している。研修生については人権侵害がしばしばある。また、フィリピンの看護師など、高度技能者は日本に来てくれない。日本人と同じ日本語能力を求めるなど、障壁が高すぎる。
 難民について。1978年〜2006年までに入国したインドシナ難民は11000人で、半数は家族呼び寄せで来た。最近の難民申請者は年に1500人前後。多くがミャンマー人である。軍事政権、少数民族への迫害が原因。日本の難民認定数は毎年30人から50人。欧米では数千、数万人単位である(資料8)。
 過去30年に日本に来たインドシナ難民について240名を対象にUNHCRと国連大学で調査した。仕事は民族料理店の経営者などが多い。あとは単純労働者。年金がない、医療保険がない、不況時に首になる、住居も安定していない、など多くの問題がある。もともと日本に来ることは第1希望ではなかった。30年前、タイの難民キャンプで日本政府が500人の枠で再定住を募ったところ、枠がなかなか埋まらなかった。日本でずっと生きるという覚悟が薄いため、日本語を勉強せずに英語を勉強するといった例もあった。欧米に行った難民は大学に行き、家を持ち、豊かな暮らしをしている者も多い。神奈川のある難民は、弟がアメリカに移住して大学を出たのに、自分は最底辺で生きていて、弟が会いに来たいというのを拒んでいる、とこぼした(資料9)。
 なぜ日本の難民は安定した生活ができないのか。定住意欲が低かった上、日本政府の定住政策が全く貧弱だった。定住センターでの日本語教育は4か月。退所後は自助努力に任せる。難民は生きるのに必死で日本語の勉強などできない。定住センター退所後は自治体の支援もなかった。NGOが細々とサポートをしてきたが、政府からの補助が皆無で財政は苦しい。神奈川の例では30年たっても日本語ができず、親が子供の勉強をみてやれないなどの事例が多い。30年の支援でも持続的な成果が上がらず、支援NGOのスタッフは燃え尽きている。政府が自治体やNGOへの「丸投げ」で保護責任を放棄している点に根本的問題がある。インドシナ難民は匿名的に生き、New comerが話題になっている中で、社会的に忘れられた存在になっている(資料10)。
 「難民鎖国日本」といわれるが、難民申請者がそもそも日本に来ない。先進国での難民申請者は毎年30万人前後だが、2007年に800人、2008年は1600人、2009年には1300人が日本で難民申請をした。大半はミャンマー人。中国2万人、ロシアも2万人の難民申請者のうち、日本での申請はほとんどない。北朝鮮からも来ない。隣国日本にかくも来ないのは異様である。
 なぜ日本を避けるのか。日本の難民政策に問題がある。第1に日本の難民支援は資金提供に偏っている。UNCRに対する日本の拠出金は毎年120〜130億円で、アメリカに次いで第2位である。カネは出すが難民はいれない(来ない)。緒方氏は2007年のJapan Times とのインタビューで“Japan lacks humanity”と言った。オックスフォードのある学者は、日本は2重の意味で責任を回避していると批判している。@カネを出して他国に面倒を見てもらう「小切手外交」。Aごく小数の難民を受け入れるもののNGOに保護責任を転嫁する。今や受け入れないことの国際的コストは受け入れる国内的コストを上回っている。
 第2に日本の難民認定手続き、基準が厳格である。法務省は国内の裁判と同じような厳格な証拠、高い立証責任を求めるため、認定率が低くなる。逃げてくる難民で、各種の証拠を提出できるものは少ない(資料11)。
 第3に、受け入れ後の自立支援が弱い。政府による自立に一番必要な日本語教育は6か月だけ。医療保険や年金は日本人でも問題を抱えているが、難民にとってはさらに厳しい。帰化も基準が高くてほとんどできない。欧米では事情が異なる。例えば日本は年をとると受け入れない。健康、若くて自立できる人のみを受け入れるが、アメリカでは年寄りでもうけいれる。知り合いのある難民の母親は「年をとったから」アメリカに再定住したという。市民権獲得もずっと容易だ。中長期的に日本での定住、永住、帰化が難しいことを多くの難民が知っているから、日本には逃げてこない(資料12)。
 少子高齢化と日本の急激な人口減少を見て、自民党の中川秀直議員らが50年で1000万人の移民受け入れる方針を打ち出し、自民党国家戦略本部も了承した。難民は人道移民として年間1000人を目指す。最近では、難民と準難民(在留特別許可)を合わせて500人になっているから、1000人は不可能ではない(資料13)。
 最近話題になっているが、「再定住」による実験的受け入れを決めたミャンマー難民30人が9月に来日する予定である。これは画期的だが、先に述べたように、受け入れ後の定住支援に大きな問題がある。政府には30年間のインドシナ難民受け入れからの学習効果がほとんどない。難民保護は「国際公共財」であって「ただ乗り」問題が出やすいが、日本は長らく難民保護についてほかの国の受け入れに「ただ乗り」してきた。国内の少数の難民についても、自治体やNGOの支援に「ただ乗り」している。
 政策提言として、今後、難民受け入れ枠は政府が決めて資金を用意し、自治体、NGOが現場で支援するという3者協力体制が求められる(資料14)。私は松本市で、再定住でくる難民を中心に、「地方における難民の自主的受け入れ」モデルを作ろうとしていて、珍しいということでメディアにも取り上げられているが、政府からの情報開示がほとんどなく、次の動きが取れないのが現状。
 時間がなく、構想をまとめられなかったが、この報告での一番のポイントは、「日本での移民(難民を含む)受け入れを国際協力の一環として扱う」ということだ。移民送金とODAをドッキングできないか検討したい。UNDP報告では日本からの移民の祖国送金は毎年40億ドルで、これは日本のODAの半分に相当する。ODAと合わせれば120億ドルが日本から流れている。移民1人が平均2000ドルとして20万人が送金すれば40億ドルになる。実質はもっと多いかもしれない。ブラジル、フィリピン、ミャンマー、中国などに送金されている。他方で、日本に人が来ることは人口減少社会の日本の活性化に役立ちうる。さまざまなアイデアが交じり合って、閉塞的な日本国内の問題解決にも結びつく可能性がある。移民は国際的な人間開発だけでなく、国内的な人間開発にも役立ちうる、と考えている。

質疑応答
福永 フランス人のジャック・アタリ氏(ミッテラン氏の元アドバイザー)がNHKテレビに出演し、「ノマド」(遊牧民)を紹介し、移動の自由が人間の自由だと主張していた。日経ビジネスでは「ノマド」を、お金、仕事、場所、時間をパートナーにする、オフィスに依存しない機動的ワークスタイルとし、そういう働き方が自分の活動範囲を広げるとしている。日本人の移民受入れに対するコンサーバティブな問題をどう考えればよいか。

滝澤 私も外国で「ノマド」であったといえる。日本にいては気がつかない経験ができた。リスクはあるが、様々な経験ができ、違うアイデアも出る。日本の法務省で働いてからアメリカに留学し、カリフォルニア大学のビジネススクールで会計学を専攻した。USCPAの資格も取り、国連に就職して財務を中心にキャリアを積んだが、工業開発とか難民問題の分野でも専門性はないがあれこれ道草を食ってきた。ノマド的な生活だ。

福永 アラブ人は定住を虚しい、その場所を汚してしまうと考えており、巡礼は義務ではなくて自由であると考えている。私はサウジに長く居て人民移動の事情は知っている。日本人も含めて、世界の人民は動きたいと思っている。

滝澤 レバノン、アンマンにいた頃、移民が多かった。彼らは移動することに抵抗がない。アンマンでの住宅の大家は湾岸で儲けたパレスチナ難民であった。日本の学生はノマド的なところがなく、安全なところから出たくない、居心地の良いところで暮らしたい、と思っている。もっとも最近は3年生の時に日本にいないと就職できない、という事情もある。

藤村 アラブ人達は、元々遊牧民だが、農耕民族である日本人は定住民族だという違いがある。人の移動とODAを関係付けるというのは面白い着眼点だと思う。経団連や自民党は、政策として日本への単純労働者の受け入れを増やそうとしているが、他方、政府は、海外からの移住者を抑えようという意識があるのではないか。日本は移住が難しいと思わせることで移民の増加を避けようとしている。したがって、移住者の受け入れを増やそうとするならば、移住の受け入れは、利点が多いと思わせる必要がある。しかし、他方で、もし移住者を増やすと、中国人がどっと増えるのではないかという恐怖心があるようだ。緒方氏の「日本の官僚には心がない」という発言の意味は、「官僚は面倒なことを避けたがる」ということだろう。最近ソフトバンクが技能者の移民を受け入れようとしているが、難民は技能者とは限らないし、取り扱い手続きが面倒で、手がかかり過ぎるという問題があり、手厚く扱えば、さらに難民がどっと増えて困るというジレンマが起こる。この辺が大きな問題ではないか。

滝澤 確かに日本に来るメリットの強調がポイントになる。移民問題は日経新聞が関心を持っていて、「人口減少社会」について興味深い連載記事がある。経団連は本音では単純労働を入れたがっていると思う。経済危機が終われば労働移民も再び増えるのではないか。日経の記事を読むと「今動かないと日本大変なことになる」という危機意識が出てくる。他方で、ほかの国でなく日本に来たいという移民が多いとは思わない。国を逃げる難民ですら日本に来ない。日本が難民を本気で救うと期待している難民は少ない。逆に将来は多くの日本人が中国に移民として出て行くのではないか。

神田 留学生は中国から来ている。ODAを使うためには外務省の整理が必要である。難民と移民の区別、日本での永住権、日本国籍を持っている、長期VISAを持っている、社会保険に入れる、学校に行ける、どのカテゴリーで受け入れるのか、整理しないとメリットがあるというPRだけではもたない。二世が生まれるとさらに難しくなる。問題は分かっているので、日本が開国型で行くなら国籍やVISAをどうするか。選挙権の問題など細かい制度設計が必要。キャンペーンだけではうまくいかない。

高瀬 滝澤さんの本日の講演要旨の前半は、UNDPの報告を要領よくまとめている。しかし、日本人側から見た一般論は、ずっと閉鎖的なのではないか。例えば、私の属しているグループでは、「瀬戸内海の島を国籍を問わずに売りに出している。もし外国人が落札したら乗っ取られるという気持ちが強く働き、簡単にいかなかった。欧米とあまりにも違う普通の日本人の考えをもっと考えに入れる必要がある」という発言もあった。

藤村 外国人に乗っ取られるという恐怖心が移住者受け入れ問題の核心ではないか。相撲業界はすでに乗っ取られているようだが。

滝澤 現状で日本に魅力があるとは思えない。日本に住み、働きたいと思う外国人は多くはない。80年代、アメリカ留学中には日本の話をしてくれとよく言われたが、今は違う。今の関心は中国だ。移民問題はタイムスパンを大きくして見る必要がある。中国など途上国でも30年なり50年後には人口減少になり、移民流出圧力は減る。移民の流れとその長期的影響は予測が難しい。狭いスパンで議論すると間違う。日本は明日のことしか見ていない。日経新聞が2100年のことを書いているが、人口問題、移民問題はそのくらいのタイムスパンで見る必要がある。

神田 中国は投資先として日本を見ている。第2次世界大戦では日本が乗っ取りに行ったが。

 Global Development Network(インドに本部のある国連機関)でも人の移動や送金の経済効果について事例研究が行われたが、全体的にポジティブな結果であった。世界はボーダレス化しており、途上国が岩手や青森の山村のように出稼ぎで成り立ってきているが、基本的には国内の出稼ぎ村と同様、地元に産業を育てることが重要。開発援助との関係では、移民や難民を広く受け入れ、彼らが海外で得た知識や経験で自国の発展のために活かせるようにODAに人材として取り込むことが考えられる。米国で成功したベトナム難民が帰国して、祖国の発展のために貢献している。これは民間ベースであるが、ODAでもそこをサポートすることができるのでは。

滝澤 Social remittance (社会的送金)の例。タイのミャンマー難民キャンプの中で女性の人権教育、男女平等問題を英語で勉強していた。ミャンマーにいた頃は人権とか男女平等などという言葉も知らなかった。今は違う。ミャンマーに帰国できたら女性の権利のために活動したいという難民がいた。このような難民(人道移民)が帰国すれば社会変革のリーダーになれる。このような社会的送金を活かして生かして自国を発展させるためにODAが使えればよい。

高橋 21世紀のカギはSocial Remittance。お金だけでなく社会に還元することが大事。日本社会にも還元できる。財政的な支援としてODAがあってもよい。先進国も途上国も元気づける。最も懸念していることは若者の環境が気の毒なことだ。元気を出せ、世界を見ろといっても無理。世代としての若者は元気のない世界で育っている。工夫をしないと元気になれない。途上国に出ていく人がSocial Remittanceを若者に還元することが可能かもしれない。SRIDの提言作業について、緒方氏は真剣に読むといってくれた。怖いわねとも。JICAは自分でやっていることがおかしいと思っている。決定的に変えていく必要がある。それには知恵が必要。Social Remittanceかも知れない。

滝澤 松本で難民を受け入れるというNGO活動について、仲間の間でも議論が百出した。「なぜ国がするべきことを我々がしなければいけないのか」と。他方で法人会員も2社ある。中小企業にも国際的な感覚が必要だ、と社長が考えている。「難民受け入れなんてとんでもないことだ」と思う人も多いが、そのような提案をきっかけに地域での議論が広がっている。難民キャンプで働いた日本人に来て話してもらったりする中で市民の意識も変わる。これもSocial Remittanceの例だろう。ちなみに難民は30年後にどうするか、を考えて行動している。難民の方がずっと先を考えていて、地域住民が刺激を受ける。松本市長はチェルノブイリに行った有名な外科医で甲状腺がんの専門家である。スローガンは「松本を人道都市にする」。自分達が何に貢献できるか。団塊の世代の役割を含め、面白い分野となりうる。

藤村 1000万人の移民を日本に受け入れた場合、そのインパクトに対して、長期的な戦略が必要であろう。農村ではフィリピン、タイ等から結婚という形で嫁を受け入れたが、50%が離婚しているそうである。離婚した母子家族が惨めな生活をしているようだ。長期滞在する場合、労働許可の条件、国籍取得の問題、選挙権の付与問題、国政参加程度等の法的、制度的な問題がある。日本に来ている留学生が日本人と結婚することも増えているが、これを望ましいと考えるかどうか。外国人との結婚が増えれば、乗っ取られるという恐怖心も減少するだろうから、外国人移住者の受け入れを増やすことにつながるかもしれない。

高橋 今の若者の結婚志向は強くない。決定的要因は制度的状況に入り込むためのエネルギーが不足していること。アトラクティブな異性が少ない。シングルでいる方が男女ともに豊かに暮らせる。いかにこれを乗り越えるか。

萩原 人口減少でなぜパニックをおこすのか理解できない。人口減少がなぜ悪いか。ある時期、人口学者はゼロ成長、ネガティブ成長を主張していた。この話を別の機会にやりたい。懇談会のネタができた。ODAで草食男子を肉食男子に。女性が肉食化すればよいのか。最近、日本女性が上海で現地男性と結婚している。最終的にディボースするかどうか見極めなければならない。(了)

プレゼン資料(pptファイル)